順位戦 A級1組
3月1日
一番の注目は、豊島二冠 vs 久保九段。
豊島二冠は、勝てば初の名人挑戦。(負けても、羽生善治 vs 広瀬竜王の勝者とのプレーオフでもう一度、勝てば、名人挑戦が決定する)
豊島二冠が、今日負けて、またプレーオフで負ける確率はそうない、と思う。なので、豊島二冠と佐藤天彦名人の名人戦が見れそうな予感。
また、今日のA級順位戦は、豊島vs久保戦以外の、他の4局(羽生vs広瀬、深浦vs糸谷、三浦vs稲葉、阿久津vs佐藤) も、全部が必見、名人への挑戦権が決まると同時に、降級者も決まる厳しい勝負です。
**対局の様子を追記、更新しました。
深浦九段は糸谷八段に負けて、降級が決定しました。。
深浦九段が、大戦直後のインタビューに、涙で答えられない姿が印象に残っています。見ていて辛くて、胸がつまる思いでした。
昨年のA級順位戦は史上初、6人のプレーオフだった
昨年は久保、豊島の2人が名人挑戦に一番近かった(6勝3敗で)。それがもつれた結果、史上初の6人のプレーオフになりました。
最後は、羽生竜王(当時)が挑戦権を獲得。羽生九段にしびれました。ここぞという時には必ず勝つ、勝負強さ。実力は当然ですが、その精神力・メンタルの強さもすごいですよね。
ただ、あと1歩のところで名人挑戦を逃した豊島二冠も、悔しかっただろうから、今度こそ!!、と熱く強く思っているはず。
あと1勝で名人に挑戦できそうだった久保王将(当時)は、今年は王将の冠を渡辺棋王に渡し、順位戦A組で降級の危機(今はA級残留は決まっています) や、王将の冠も奪われて、勝負の世界とはいえ、厳しいです。
順位戦のA級(最終)の5対局に注目!
順位戦の今の状況と、過去の対戦成績を載せてみました。
豊島vs久保 戦
豊島将之
勝てば→初めての名人挑戦権獲得
負ければ→羽生vs広瀬の勝者とプレーオフになる。
久保利明
ここまで4勝4敗なので、A級の中で、勝ち越せるかどうか、の戦い。
降級は無しが確定しています。(4連敗して、降級争いの2番手だった時もあったけど)
**過去の対戦成績などは、別(下の方)にまとめますね。
広瀬vs羽生 戦
羽生善治
広瀬章人
2人とも6勝2敗。(豊島二冠は6勝1敗) 豊島二冠が負けた場合のみ、プレーオフになる。そのプレーオフに出るため、絶対勝ちたい、羽生九段と広瀬竜王。
過去の対戦成績 羽生vs広瀬
羽生18勝、広瀬12勝。順位戦は、羽生九段の2戦2勝。 羽生九段が少し有利そう?
深浦vs糸谷 戦
深浦康市
負けると、降級が決定。もし勝っても、三浦九段が勝てば、深浦九段は降級してしまう。厳しい。。。
深浦九段頑張って欲しい。いつもは糸谷九段を応援してるのですが。
糸谷哲郎
特になし。勝って、順位を上げることのみ。背負うものがない分、戦いやすいかも。
過去の対戦成績 深浦vs糸谷
糸谷6勝、深浦1勝。順位戦は初対局。 この勝率の差がすごい。しかも、1度しか勝ってないとは。深浦九段は、糸谷八段は苦手なのかな?
佐藤vs阿久津 戦
佐藤康光
ここまで4勝4敗なので、A級の中で、勝ち越せるかどうか、の戦い。
阿久津主税
ここまで8連敗で、すでに降級は決定しています。
昨年、糸谷八段と一緒にB級1組から昇級してきたばかりですが、全敗でB1に戻るのは辛すぎる。ぜひなんとか1勝して、一矢報いたい、と思いは強いかな。
過去の対戦成績 佐藤vs阿久津
佐藤6勝、阿久津5勝。順位戦は、佐藤1勝。互角、といっていいのかな? 佐藤会長の実績から見たら、阿久津八段は苦手、に入るのかも?
三浦vs稲葉 戦
三浦弘行
勝てば、残留決定(自力残留)。負ければ、降級の危機。(だけど、それは深浦九段が勝った場合のみ)
稲葉陽
特に無し。残留は決まっていますし、勝っても負けても、負け越しが決定してます。気楽に戦える、というよりも、稲葉八段のモチベーションは、いまいち上がらないかも?
過去の対戦成績 三浦vs稲葉
三浦7勝、稲葉3勝。順位戦は、稲葉八段の2勝1敗。 うーん、互角か、少し三浦九段が有利かな? とすると、深浦九段の降級が心配です。
お待たせしました。
ここからは、一番の注目、豊島vs久保 戦について、です。
豊島&久保の今年度の成績&対戦成績
今年度成績
豊島 0.642
久保 0.457
対戦成績
久保九段の15勝14敗。 互角です。直近の対局は豊島二冠が勝ってます。
豊島vs久保 対局開始から
序盤から、昼までの様子を
先手は豊島
戦型は、角交換で、振り飛車です。
20手まで 消費時間が、豊島4分、久保6分、ポンポン進んで
何か変な音がする? と思ったら、中継機材のトラブル。10分くらい中断して、無事再開。
昼までの消費時間
39手まで
豊島二冠 1時間27分、久保九段 56分、で、30分ほどの差。
昼メニューは松花堂弁当。
昼食休憩後の対局
大長考の末、豊島二冠の指し手の意味がわからない?
40手、昼食後に久保王将が指してから、41手目に豊島二冠が大長考。指したのが、15時6分。なんと、125分も考えた!
消費時間が、豊島二冠 3時間32分、久保九段 57分。
面白かったのが、この豊島二冠が二時間もの長考の後に打った手の説明が「真意がつかめない」「過激なのはわかるが、長考の中身が謎だ。」だったこと。
16時過ぎの斎藤王座の大判説明でも、「後手を持って受けてみたい」と少し久保九段持ち。
ただ、その直後に、自陣の2八に角を打った豊島二冠。「これが長考の理由だったようだ、攻めが細そうでも意外にうるさい。自陣の玉も堅い」と解説陣の説明が真逆?になってきた。
夕食頃の対局の様子
56手まで
残り時間 豊島二冠 2時間4分、久保九段 3時間7分。豊島二冠は夕食後の大長考がひびき、1時間以上の差。
夕食メニュー 豊島二冠がミニカツカレーセットのせいろそば、久保九段がミニカツ丼セットのせいろそば。
どちらもカツがついているけど、カツ=勝つ なの? ツイッターの写真で見たら、結構なボリュームでした。豊島二冠って、しっかり量を食べても、スレンダーです。
73手まで
金井六段が、形勢判断を豊島勝勢にした頃です。 実際、感想戦で、久保九段は、「65手ぐらいから自信がなくなってきた」と。
85手まで
豊島二冠が、角を切っての攻撃。読み切ってるのかな? ここから、駒をどんどん捨てながら、攻め続けていきます。
100手まで
久保九段の玉が、金を捨て、逃げる。 残り時間が、豊島二冠 28分、久保九段 22分と、いつの間にか、時間差が逆転していました。
110手まで
解説が「久保が驚異的な粘り腰を発揮している」と。 頑張る久保九段。持ち駒は、飛車、角、金、歩二枚とめちゃたくさんある。だだ、豊島二冠の玉の周りがガチガチに固くて、攻めれそうにない。
12時を回ってまだ終わりません。他の順位戦は終わってます。
122手まで
解説の「久保は攻めの手をほとんど指していない。受けてばっかりで、その受けを淡々と指し続ける、久保の精神力、根性が伝わってくる」 まさに、この通り、です。タイトルをいくつも取る棋士は、皆すごいです。決して諦めない!!! その姿勢がすばらしい。
133手まで
久保九段が投了しました。0時24分でした。
残り時間が、豊島二冠 9分、久保九段 1分。(久保九段は、128手から1分将棋)
豊島二冠が優勢になってからの、久保九段の粘りがすごかった。
他の対局について少しだけ
深浦vs糸谷の降級がかかる対局と阿久津八段
対戦成績は、糸谷6勝、深浦1勝で一方的すぎる。しかも今日は糸谷八段が先手。深浦九段ピンチ?
昼ごろの対局の様子
消費時間は、深浦 1時間40分、糸谷 1時間6分。思ったより時間差ないなと思ったら、昼食後、深浦九段が110分の長考。
昼食は2人とも松花堂弁当。メニュはこれって決まってるのかな?(糸谷八段はいつも揚げ物のイメージだし)
14時過ぎ、深浦九段は角を切って(角金交換)して金を作る。後手とは思えない攻める深浦九段。
16時過ぎの対局の様子
50手。
斎藤王座は糸谷持ち、鈴木九段と佐々木大地五段は深浦持ち。(持ち時間は糸谷八段の方が1時間10分多い)
56手
深浦九段が、飛車の頭に2三歩と打つ。これが、敗着となったらしい。(8一飛なら、もつれていた、と) 糸谷八段は飛車切りで応える。読み切ったのか糸谷八段?
夕食頃の対局の様子
73手まで 解説は、先手優勢、急転直下の展開と。残り時間は、深浦 1時間26分、糸谷3時間17分。2時間近い時間差になってます。
夕食メニューは、深浦九段がミニカツカレーセット(ご飯少なめ、ミニ蕎麦なし)、糸谷八段は穴子丼。
ツイッターで、A級棋士全員のメニューを見たら、全員が寿司か、ミニ〇〇を注文してました。糸谷八段のメニューだけに、”ミニ“の文字がない。。。 1人だけたっぷり食べた ?糸谷八段。
夕食後の対局再開
74手 深浦九段は、46分考え、指すと、糸谷八段は1分で返す。
76手 深浦九段、37分考える。と、糸谷八段はまた、1分で指す。しかも金取り。深浦九段の玉の周りに誰もいなくなった(守りの駒が)。。。 深浦九段の残り時間が3分、糸谷八段は3時間15分。絶体絶命。
83手 深浦九段が1分将棋に。
糸谷八段の勝利で、深浦九段の涙と降級
91手で、深浦九段が投了。20時24分。深浦九段の降級が決まった瞬間でした。
深浦九段は、うつ向いて、目のあたりを手でこするような場面があり、記者の質問に、すぐ答えられず。声を絞り出すように、短い返答が精一杯。その声が震えてる。「1から出直します。」
見ていて、胸がつまりました。いつかは誰もが通る道かもしれません。でも、辛い。
来期は戻ってきてくれるように応援したいです。
阿久津vs佐藤の対局についても一言だけ
阿久津八段が勝って、一矢報いた
103手で、阿久津八段が勝つ瞬間(佐藤会長が投了する時)を見ました。
阿久津八段が、感無量というか、下を向いて、目をつぶり、静かに「やった。。。終わった。。。」という感じの表情。
ハァー、終わったあーとかでなく、背負ってたものがやっと取れた、みたいな。あーヨカッタァーって軽い感じでなくて、やっと呪縛から解かれた、これでやっと今日から安心して寝れる、みたいな表情。うまく言えないけど。
A級で負け続け(全敗。。)た阿久津八段、想いが色々あったんだなーっ、辛かったんだな、っておもんばかる表情でした。阿久津八段も少し涙が。。って見えた気がしたんだけど、見間違えかな?
A級の最終戦は、真剣勝負と勝負以外の色々な想いが伝わってくる、素晴らしい対局でした。
豊島二冠と佐藤天彦名人の戦い、めちゃめちゃ楽しみですね。
名人戦の第1局は、4月10日・11日、第2局は4月22日・23日 です。まだ先だけど今から待ち遠しい。
その前に、3月5日のC級1組の順位戦の最終戦も楽しみ。杉本師匠(と藤井聡太七段)の昇級も応援したいです。
特に杉本師匠には是非、絶対昇級してほしい。50歳での昇級なんて、なかなかないですもん、きっと相当努力されたんでしょうね、杉本師匠。
8段に昇段もした師匠↓ の話